66年の「沓掛時次郎 遊俠(ゆうきょう)一匹」では、時の大スター、中村錦之助(萬屋錦之介、右)と共演。「おひけぇなすって……」と朗々と仁義を切る場面もある=東映提供
映画「男はつらいよ」シリーズで、「フーテンの寅さん」を演じた俳優の渥美清さんが亡くなって、8月で20年になる。これを記念する映画上映会が11日に始まる。「寅さん」以外の作品を集めた企画だ。愛され続ける「昭和の名優」の多彩な姿が、いま一度輝く。
「俳優・渥美清の軌跡」と題した上映会は東京・築地の映画館「東劇(とうげき)」で24日まで開催される。「拝啓天皇陛下様」「八つ墓村」など寅さん映画以外の8本。いずれも1960~70年代の作品だ。
「浅草のストリップ劇場で培った軽演劇の味があふれている。テキパキとした動きやリアクションが堪能できる」と娯楽映画研究家の佐藤利明さん(52)。60年代後半に「寅さん」に出会う前の約10年間、渥美さんのキャッチフレーズは「丈夫で長持ち」だった。「軽み」の芸の中に「いつかは天下をとる」と役者としての気概をのぞかせていたという。
今回上映される作品の中には、渥美さんが初主演した「あいつばかりが何故(なぜ)もてる」(62年、松竹、酒井欣也監督)がある。のちに寅さん映画で、寅の妹の「さくら」を演じることになる倍賞千恵子さんも共演。お人よしで、美しい女性に恋をするという展開は、寅さんをほうふつさせる。寝台列車のベテラン車掌を演じた「喜劇 急行列車」(67年、東映、瀬川昌治監督)も登場。乗客との軽妙でユーモラスなやりとりが魅力だ。