インタビューに応じる中原伸之・元日銀審議委員=都内
■金融政策 私の視点
日本銀行は15、16日に金融政策決定会合を開く。安倍政権が消費税率引き上げの再延期を決めたことで、日銀の金融政策に変化はあるのか。積極的な金融緩和論者で、安倍晋三首相の経済ブレーンとして知られる元日銀審議委員の中原伸之氏(81)に今後の展望をきいた。
金融政策 私の視点
――安倍政権が消費増税の再延期を決めました。
「極めて正しい判断だ。過去の政権が消費税を導入したり引き上げたりした時も景気は失速したが、2014年4月に消費税率を8%に上げた後、ここまで消費が落ち込むとは想像しなかった。個人消費はいったん落ちると、なかなか元に戻らない。政治の合意も大事だが、経済情勢は無視すべきではない」
――消費税率を引き上げられる情勢ではないですか。
「安倍政権が不幸だったのは、逆風のなかで障害物競走を走らされたこと。13年4月に異次元の金融緩和を始めてからわずか1年後に消費増税の高いハードルがあり、さらに今は中国経済の減速という逆風が吹いている。上海の株式売買代金はこの1年で9割も減った。中国の経済発展の結果、造船や鉄などは供給過剰なうえ、新幹線やスマートフォンなどの先端分野でも世界的な価格競争が激しくなっていて、景気は大きく下ぶれる恐れがある」
――消費増税を先送りすることで、財政再建が遅れる心配はありませんか。
「『二兎(にと)追うものは一兎(いっと)をも得ず』と言う。財政再建を急ぎすぎると、経済は必ずダメになる。いまは経済を建て直すほうが先決だ」
「名目成長率が名目の長期金利を上回っていれば、政府債務残高の対GDP比率を押し下げる効果がある。この比率は基礎的財政収支と並んで重要な指標だ。長期金利がマイナスにまで下がったことは、低い成長率の下で政府債務の対GDP比率が膨らむのを抑える役割を果たしている」