「潔白」主張したロシアの主要選手の訴え
ロシアの陸上チームはリオデジャネイロ五輪に出られるのか。国際陸上競技連盟は17日(日本時間18日未明)、ウィーンで開く理事会後の記者会見で、ロシア陸連の資格停止処分を解除するかどうかを発表する。国際オリンピック委員会(IOC)がドーピング撲滅に強い姿勢で臨む中、すでに一国の一競技の代表チームが丸ごと、リオ五輪から締め出された例もある。
ロシア反ドーピング機関元幹部死す 深まる謎、真相は
特集:ロシアのドーピング不正問題
ドイツ公共放送ARDのドキュメンタリー番組が2014年12月、ロシア陸上界の組織ぐるみのドーピング疑惑を明らかにしたのが始まりだった。昨年11月、世界反ドーピング機関(WADA)独立委員会が関係者らに聴取してまとめた報告書を公表すると、ロシアへの批判は一気に高まった。
報告書は、代表チームのコーチから選手に禁止薬物が与えられ、コーチと検査機関側が結託して検査をすり抜けた▽陽性とされた場合は、ロシアの反ドーピング機関の幹部らに賄賂を渡し、もみ消しを図った▽公認の検査機関がロシア政府の監視下に置かれ、検体を破棄するなどしていた――ことを指摘した。数多くの不祥事に、国際陸連も同月、ロシアチームを無期限の資格停止処分とした。処分が解除されなければリオ五輪から締め出されるため、ロシアも改革に乗り出さざるを得なくなった。
選手側からは反発の声も上がった。女子棒高跳びの世界記録保持者エレーナ・イシンバエワは、ロシア選手を一律に排除するなら「潔白な選手にとっては不公平だ」と異議を唱えた。ところがその後も、ロシアの検査機関の元所長が「ソチ五輪で尿検体をすり替えた」「ソチではメダリスト15人を含む数十人の選手がドーピングを行った」と米紙に証言。冬季五輪でも組織的なドーピング疑惑が出たことで、薬物汚染が陸上に限らず、広がっている可能性が強まった。
ロシアの状況は改善されているのか。WADAが15日に新たに公表した報告書には、それを否定するような事例が並んだ。
ロシアの反ドーピング機関が不適格とされた昨年11月以降、国際陸連や英国の反ドーピング機関などが実施した検査の状況をまとめていて、3カ月余で736件もの検査逃れや拒否があったと指摘した。
報告書によれば、陸上のある女子選手は尿入りの袋を体内に仕込んでいたことが見つかった後、検査官を買収しようとした。抜き打ち検査を受けるため、選手は事前に居場所を報告する必要があるが、検査官が出向くのが困難な軍事拠点を自分の居場所として伝える選手がいるなど、非協力的な例が多数あったという。検査官が駆けつけると、大会に出場する予定だった選手が急に棄権するなど不自然な動きも目立った。