参院選で焦点になった「3分の2」。国会が憲法改正を発議するのに必要な議席数で、自民党など改憲に前向きな党派の合計がこのラインに達するかどうかが注目された。投票のとき、3分の2のことを考えましたか――。東京都内の投票所でたずねた。
特集:2016参院選
江東区の会社員女性(44)は安倍晋三首相に好感が持てないという理由で、野党に入れた。「3分の2って、何でしょうね。うーんって感じ。テレビとか見ないんで」。立川市の無職氏田一男さん(69)も「わからない。憲法なんて読んだことないしねえ」と苦笑いした。
中野区の男性会社員(33)は「確か憲法に関することですよね」。ただし、改憲手続きの詳細までは知らないといい、「改憲を最終的に決めるのは国民投票だとは知りませんでした」。今回は「経済的な安定が一番大事」と考えて、自民に一票を投じたという。
一方、「3分の2の意味を知っている」と言う人たちも、投票の判断材料にしたかどうかは分かれた。
自衛隊を「国防軍」に改め、憲法に明記するべきだと考えているという中央区のすし店経営の男性(74)は改憲派の議員を3分の2超に増やしたくて自民に投票した。港区の会社員女性(45)は逆に「改憲勢力が3分の2を取るのは防ぎたい」と考えて民進に一票を入れた。
港区で飲食店を経営する鈴木尊寛さん(39)は選挙区は自民に、比例区は白票を入れた。集団的自衛権の行使には賛成だが、憲法9条改正は行き過ぎだと思う。「民進党に政権担当能力があると思えない。政権を任せたいのは自民だけど、改憲勢力の3分の2超えは阻止したいという消去法で考えた」という。
景気対策を重視して自民に入れたという渋谷区の日本舞踊講師、大須賀英子さん(74)は今回は投票の判断材料にしなかった。「時代に合わせた憲法は必要」と考えるが、9条の改正には反対だし、改憲についての議論もまだ足りないと感じる。「もし本当に憲法改正に向けて動くのであれば、国民がじっくりと考える時間と材料が必要。政治は、急いだら絶対ダメだと思う」
国会による憲法改正の発議は、衆参両院それぞれの本会議で3分の2以上の賛成で憲法改正原案を可決する必要がある。衆院では自民、公明の与党が2014年の選挙で「3分の2」超の議席を獲得。今回の参院選で、自公など憲法改正に前向きな改憲勢力が参院でも3分の2を超えた。