1995年の地下鉄サリン事件など五つの事件に関与したとして、殺人などの罪に問われて一審で無期懲役の判決を受けたオウム真理教元信徒・高橋克也被告(58)の控訴審第1回公判が11日、東京高裁(栃木力裁判長)であった。弁護側は地下鉄サリン事件について、「人を死亡させる危険性が高い毒物をまくとは認識していなかった」と改めて無罪を主張。検察側は控訴棄却を求めて結審した。判決は9月7日に言い渡される。
特集:オウム真理教
昨年4月の一審・東京地裁判決は、高橋被告が地下鉄サリン事件のほか、猛毒の化学剤「VX」を使った2件の殺傷▽公証役場事務長の拉致▽東京都庁郵便小包爆発の4件にかかわったと認めた。地下鉄サリン事件で、高橋被告がサリンを散布する実行犯の送迎役を務めたと述べ、「サリンの可能性を含む危険性の高い毒物を、地下鉄にまくと認識していた」と判断。「高橋被告の役割は犯行を成功させるために非常に重要だった」とした。
弁護側はこの日、教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(61)らとの共謀を否定し、地下鉄サリン事件などで無罪を主張した。松本死刑囚らの証人尋問を求めたが、高裁は却下。被告人質問は行われずに結審した。
地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(69)は会見し、「一審から1年以上経ち、どう気持ちが変わったかは聞きたかった」と述べた。
オウム真理教による一連の事件の裁判は、2011年12月にいったん終結したが、12年に高橋被告ら特別手配犯3人が相次いで逮捕され、14年1月から再開された。公証役場事務長拉致事件などにかかわった平田信受刑者(51)は逮捕監禁などの罪で懲役9年が確定。殺人未遂幇助(ほうじょ)などの罪に問われた元信徒の菊地直子被告(44)は、昨年11月の二審・東京高裁判決で、無罪が言い渡され、検察側が上告している。(塩入彩)