21日、米オハイオ州クリーブランドの共和党全国大会で、大統領候補の指名受諾を表明し、演説する実業家ドナルド・トランプ氏=AFP時事
米共和党の大統領候補に指名されたトランプ氏(70)は21日夜(日本時間22日昼)、オハイオ州で開かれた党全国大会で指名受諾演説を行った。外交・安全保障、経済政策とも米国益を最優先する「米国第一主義」が「我々の信条になる」と強調。環太平洋経済連携協定(TPP)に反対する姿勢を打ち出した。
米大統領選2016
大会最終日の21日、党から大統領候補に指名されたトランプ氏が登壇し、指名受諾を宣言。その後に演説し、「我々は米国を最優先する。グローバリズムでなく、アメリカニズム(米国主義)が信条になる」と強調。「米国を最優先しない政治家が率いる限り、米国は他国から尊敬されない」とオバマ政権を批判した。
既成政治を批判し、「私ほど仕組みを熟知している人間はいない。私だけが修正できる」と自信を示した。
貿易政策では「だましている国に立ち向かう新たな、公平な貿易政策を開始する」と強調。TPPについて「米国の製造業が破壊されるのみならず、米国が外国政府の支配下に置かれる」と指摘し、「米国の労働者を傷つけ、自由と独立を脅かす、いかなる貿易協定にも署名しないと宣誓する」と主張した。また、北米自由貿易協定(NAFTA)については関係国と再交渉し、「我々が望む合意ができなければ、離脱する」と述べたほか、中国の知的財産権侵害を批判し、中国との貿易協定も見直す考えを示した。
外交・安全保障政策では、民主党のクリントン前国務長官時代に過激派組織「イスラム国」(IS)が勢いを増し、リビアやエジプトが崩壊したとして、その外交手腕を疑問視した。
また、「我々は劣化した米軍を再建し、米国が防衛する国々に相応の負担を払うよう求める」と語った。以前、駐留経費を日本側が全額負担しなければ在日米軍を撤退させるとし、自国防衛のための日韓両国の核兵器保有を容認する考えも示唆。演説では日本には触れなかったが、北大西洋条約機構(NATO)については「多くの国がテロと戦う対価を払っておらず、時代遅れだ」として改革が必要との認識を示した。
一方、移民政策では「不法移民やギャング、暴力を防ぎ、薬物の流入を防ぐため、国境に巨大な壁を建設する」と強調。自分が大統領になれば、「犯罪や暴力はなくなる」と述べた。
また大規模減税で「雇用を呼び戻す」と訴え、積極的に設備投資を進める考えも示した。
演説では、11月の本選で対決するクリントン氏への敵意をむき出しにし、国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題に触れ、「彼女が達成したのは、ひどい犯罪に関与し、その罪から逃れたことだ」と指摘。大企業から多額献金を受けているとして「彼らは彼女のすべてをコントロールしている。彼女は操り人形だ」と断じた。(クリーブランド=佐藤武嗣)