再審請求中の受刑者が、証拠品のビデオテープを警視庁が紛失したために損害を受けたとして、国や東京都などに計1千万円の賠償を求めた訴訟の上告審で、受刑者の敗訴が確定した。最高裁第一小法廷(大谷直人裁判長)は21日付の決定で、上告を退けた。
訴えたのは、デモで警官1人が死亡した1971年の「渋谷暴動事件」で、殺人などの罪で無期懲役が確定し徳島刑務所で服役中の星野文昭受刑者(70)。テープは暴動を報じたニュース映像の録画で、裁判の証拠として東京地裁に提出された。地裁はテープの保管を警視庁に委託していたが、2008年に裁判所が証拠品の保管状況について調査した際に、紛失が発覚した。
14年の一審・東京地裁判決は「テープが新証拠になる可能性は低いが、解析して検討する権利が奪われた」として、国と都に計20万円の支払いを命じた。だが昨年の二審・東京高裁判決は「テープが重要な証拠になる可能性は予見できず、受刑者の利益を侵害したとはいえない」として、星野受刑者の逆転敗訴判決を言い渡した。