土石流にのみ込まれ、基礎部分だけが残った住宅跡(手前)。土石流が発生した大金沢(奥)では、新たな被害を防ぐ導流堤の建設が進む=12日、東京都大島町元町
集中豪雨が多発する季節で土砂災害の危険が高まるが、土砂災害防止法に基づく警戒区域の指定は思うように進んでいない。指定が済んでも、追加調査が必要になったり、実効性のある避難計画を作るのが難しかったりする。犠牲者が出た広島や熊本、東京・伊豆大島でも課題が残る。
土砂災害「警戒区域」の指定、7割未満 国交省が調査
災害関連死を含む77人が死亡した2014年8月20日の広島土砂災害。最大の被災地の広島市安佐南区八木地区はその後、警戒区域と特別警戒区域に指定された。指定後の昨年末、特別警戒区域内に前河内稔さん(82)と菊江さん(74)夫妻は土砂で壊れた自宅を取り壊して新築した。
特別警戒区域で新築する場合、壁を強化するなどの構造規制がかかる。前河内さんも土石流に備えて300万円ほどかけて家の山側に厚さ約20センチ、高さ約1・6メートルの壁を作った。
稔さんは車椅子生活で、菊江さんも白内障でぼんやりとしか見えない。それでも周囲に家が新たに2軒たち、「元の土地が一番落ち着く」と話す。
八木地区と隣接する緑井地区は災害発生時、警戒区域に指定されていなかった。山沿いに宅地も多い広島県は、警戒区域の推計が約3万4千カ所と全国最多。県の担当者は「数が多く限界があった」と話す。
県は15年度に指定専従の職員を6人配置し、予算も増額。だが、県全体の指定率は今年6月末時点で47%にとどまる。19年度中に警戒区域と特別警戒区域の指定完了を目指す。
住民の理解を得るのにも時間がかかる。広島市佐伯区の美鈴が丘地区で6月19日に開かれた説明会では、「家の値段が下がる」「固定資産税は減額されるのか」といった意見や質問が相次いだ。同地区は約4千世帯の1万人が暮らす。基礎調査で山側などの一部が警戒区域や特別警戒区域に該当するとされた。
地区の自主防災会連合会長の刎…