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「ボタン連打、スポーツの原点」 遊び変えた五輪ゲーム

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ファミリーコンピュータ


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4年に一度、世界を熱狂させるオリンピック。その影響を受け、発展してきたもののひとつに挙げられるのがゲームだ。次回、2020年のオリンピックの開催地は東京。日本が世界の最先端を走り続けるゲーム業界は今、さらなる進化に向けて各社が次世代技術の開発を急ぐ。オリンピックとゲーム。その関わりの歴史を振り返りながら、未来のゲームの姿を考えてみた。


【五輪TVゲーム年代記】懐かしのソフトを写真と動画で振り返る


特集:リオオリンピック


スペースインベーダーが登場したのが1978年。その後、ブームに乗って近所にも次々とゲームセンターができるようになり、子どもたちの遊びに新たに「ゲーム」という選択肢が加わった。


とはいえ、ゲームセンターのゲームは1回100円。その後50円に値下がりしたものの、子どもたちにとってはまだまだ高嶺(たかね)の花だった。10円でできるゲームがあると聞けば、隣町まで全速力で自転車をこぎ、長蛇の列に何回も並んだが、それでもお小遣いでできる回数には限りがある。


家で、無料で、思う存分テレビゲームをしたい――。それは、子どもたちの大きな夢だった。


それを実現したのが、83年に登場したファミリーコンピュータ(ファミコン、任天堂)。ゲームセンターと同じゲームが家庭で、しかも何度でも遊べる。「家庭用テレビゲーム」という新しいおもちゃに、当時の子どもたちは夢中になった。


家庭に入り込んだテレビゲームの楽しさは子どもたちだけでなく、まもなく大人の心もつかむようになる。きっかけとなったのがスポーツゲーム。肉体を鍛え抜いたアスリートだけのものだったドキドキ感を、家庭で気軽に何度でも味わえる楽しさは、大人も子どもも同じ。「ゲームなんて……」と眉をひそめていた大人たちも、やがて子どもと一緒に家庭用テレビゲームを楽しむようになり、このことが後にゲーム業界を一大産業に押し上げる原動力となった。


■コインや定規も小道具に


スポーツの華といえば、世界の頂点に立つアスリートが4年に一度の勝負に火花を散らすオリンピック。スポーツゲームの世界でも、オリンピックは重要なコンテンツとして捉えられた。


オリンピック関連の家庭用ゲームとして多くの人の記憶に残っているのは「ハイパーオリンピック」(コナミ、現・コナミデジタルエンタテインメント)だろう。オリジナルは、ゲームセンター用のアーケードゲーム。84年のロサンゼルス五輪に合わせ、前年の83年に発表。家庭用には85年にファミコンソフトが発売されている。


「とにかくボタンを連打して速く走るといった単純明快なおもしろさは、まさにスポーツの原点」(ゲーム情報誌「週刊ファミ通」の林克彦・編集長)というソフトそのものの魅力に加え、コインや定規といった小道具を使って記録を上げるという、ゲームの新しい楽しみ方を提供してくれたソフトでもあった。


コナミは「コナミックスポーツ」のタイトルで88年(ソウル五輪)、92年(バルセロナ五輪)にも対応するゲームを発売。96年(アトランタ五輪)の際には「ハイパーオリンピック」の名前も復活させた。


オリンピックにちなんだゲームを出したのはコナミだけではない。カプコンは「CAPCOMバルセロナ’92」を、ココナッツジャパンエンターテイメントは「炎の15種目アトランタオリンピック」を発売。それぞれ、当時まだ家庭用ゲームとしては珍しかった競泳を採り入れたり、遊べる競技種目を多数採用したりといった特徴を打ち出した。


この頃にはスポーツゲームの裾野も広がり、必ずしもオリンピックだけをテーマにしたわけではないソフトも登場している。ドッジボールなどで有名な「熱血硬派くにおくん」シリーズの「びっくり熱血新記録 はるかなる金メダル」(テクノスジャパン、1992)や、「デカスリート」(セガ、1996)といったソフトは、オリンピックファン以外にも多くの支持を受けた。


■プレー見て楽しむ文化も


2008年、ゲーム好きを驚かせる大きな出来事が、オリンピックを舞台に起きた。この年発売された「マリオ&ソニック AT 北京オリンピック」で、任天堂の「マリオ」、セガの「ソニック」という世界的に有名なライバルキャラクターが同じゲームの中で共演した。


実はこの共演、もともと両社で検討を重ねていたものの、なかなか実現に至らなかった経緯がある。それを実現したのが五輪。「オリンピックという両キャラクターが活躍するにふさわしい舞台が整い、両社協力の下、ゲーム化が実現した」(セガホールディングス広報部・山田愛さん)という。


この「マリオ&ソニック」シリーズは、ロンドン五輪でも新作を発売。今回のリオ五輪でも新作を発売したほか、初めてゲームセンターでのアーケードゲーム版も発表した。


「ドット絵」と呼ばれる粗い画像でハードウェアの性能の限界に挑戦した初期の頃から、実写と見間違えるほど精密なコンピューターグラフィックスを駆使した現代まで、オリンピックを中心としたスポーツゲームは大きな進化を遂げた。


そんな中、もともと自分で手を動かして楽しむものだったゲームはその枠を超え、他人のプレーを見て楽しむことがひとつのジャンルとして成り立つ時代となった。


ユーチューブ、ニコニコ動画といった動画投稿サイトとともに発展してきた「見て楽しむ」というゲームの新しい可能性。ここにも新しい技術の波が押し寄せている。


なかでも注目を集めているのがバーチャルリアリティー(VR)技術。ゴーグルを通して感じることができる、まさにゲームの世界の中にいるような感覚は、これまでのゲームの概念を根本から変えてしまうのではないかと期待されている。


「もっと楽しみたい」――。そんなユーザーの欲望に応えることで、今や日本を代表する一大産業となったゲームの世界。2020年の東京オリンピックに向けて、さらに進化を続けている。(田之畑仁)



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