自動運転技術について語り合う登壇者たち。右から、実践女子大の松浦常夫教授、日産自動車の安徳光郎常務執行役員、東進ハイスクール・東進衛星予備校現代文講師の林修さん=1日、東京・六本木アカデミーヒルズ、迫和義撮影
シンポジウム「自動運転技術で私たちの生活はどう変わる?」(朝日新聞社メディアラボ主催)が1日、東京都港区の六本木アカデミーヒルズで開かれた。日産自動車の最新技術が紹介されたほか、事故や渋滞を可能なかぎり減らしてゆく「未来」の車社会への期待などが語られた。
自動運転技術をめぐっては、日米欧の大手自動車メーカーが開発にしのぎを削っている。日産の最新技術は、高速道路の単一車線であれば、ハンドルやアクセル、ブレーキをシステムが自動制御し、運転者の負担を軽くするというもの。国内メーカーで初めて、渋滞時でも対応する技術をミニバン「セレナ」に搭載し、今月下旬から売り出す。
シンポジウムには東進ハイスクール・東進衛星予備校現代文講師の林修さんと日産の安徳光郎常務執行役員、交通心理学が専門の実践女子大の松浦常夫教授が参加。安徳さんは「『クルマが人を守る』というコンセプトのもと、20年以上にわたって進化させてきた技術。車が判断や操作を支援することで、運転者のミスによる事故の防止に大きく貢献できる」と語った。
米国では最近、自動走行機能を備えた電気自動車メーカー「テスラ」の車がトレーラーと衝突し、運転者が死亡する事故も起きた。林さんが「運転者の癖、運転の個人差に技術を対応させることも可能なのか」と尋ねると、安徳さんは「人工知能を使い、一人ひとりの癖をクルマが自動的に学習し、合わせていく技術の開発に取り組んでいる」と応えた。
自動運転の技術開発や可能性が広がる一方で、運転を任せることを社会がどう受け入れるか、という課題も浮かび上がっている。事故が起きた際に責任を負うのはメーカーか、運転者かを法的に整理しておく必要があるといった指摘もある。シンポでは、さまざまな課題に取り組みながら安全な技術を提供する必要性が議論され、松浦さんは「バスやタクシーが無人で自動運転されれば、無免許の人や公共交通機関が廃止されたところに住む人などが安価に利用できるようになる」と普及の意義を語った。
それを受けて、林さんは「機械が人間の仕事を奪うという問題はあるかもしれないが、メリットはメリットとして享受し、新たな問題が発生したら解決策を考える、という二つの基準で対処していけばいいのかなと感じた」と話した。