米ワシントンで10日、記者会見で「信教の自由」の年次報告について話す国務省のサパースタイン大使(信教の自由担当)=AFP時事
米国務省は10日、世界各国の「信教の自由」について現状をまとめた年次報告書を公表した。記者会見で同省のサパースタイン大使(信教の自由担当)は、米大統領選の共和党候補トランプ氏がイスラム教徒の米国への一時入国禁止など差別的な発言をしていることについて問われ、「誰が当選しても米国の憲法が(信教の自由を)保障する」と話した。
報告書は米国以外の約200カ国・地域の現状に焦点を当てたもの。トランプ氏の発言は報告書の範囲外だが、サパースタイン氏は「米政府は明確に懸念を示してきた。市民のいかなる権利も宗教によって異なってはならない」と語った。さらに「米国では憲法、制度で信教の自由を侵害することを禁じていると(世界の人々に)知られている。(トランプ氏の)発言でそれが傷つくことはない」とした。
一方、報告書では、欧州の一部で移民や難民の増加に伴って宗教差別が起きていることを懸念。スロバキアの当局者が「イスラム教徒は安全保障、文化、社会への潜在的な脅威だ」として、キリスト教徒の難民を選んで滞在させると言及していることを問題視した。ハンガリーでも「難民危機の高まりに従って、反イスラム教徒の感情がある」と指摘し、イスラム教徒を標的にした襲撃が起きているとした。(ワシントン=杉山正)