守備から戻った野手たちをベンチ前で出迎える嘉手納の選手たち=16日、阪神甲子園球場、杉本康弘撮影
(16日、高校野球 明徳義塾13―5嘉手納)
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嘉手納(沖縄)が16日の3回戦で強豪の明徳義塾(高知)と対戦、「初出場で8強」に挑んだ。地元の町や村出身の選手が大半を占める県立高。飛び抜けた選手はいないが、小さい頃から顔なじみでチームワークは抜群。この日も大量リードにめげることなく、初戦に続くのびのびしたプレーで甲子園を沸かせた。
八回。大量12点差にもかかわらず、嘉手納が集中打をみせた。指笛が鳴り響く中、吹奏楽の演奏に乗って6連続長短打。球場全体から自然と手拍子が起きた。
2点適時二塁打を放った主将の大石哲汰君(3年)は「あきらめる雰囲気は全然なかった。スタンドと一緒にお祭り騒ぎでした」。計4点を挙げた。
甲子園では戸惑うことも多かった。11日の前橋育英(群馬)戦では、いつものペースで打席に向かうと、審判に促され、慌てて打席に入り早打ちして、凡打に終わった。3失策とミスも相次いだ。だが、選手は意に介さなかった。「ミスはいつもあるから気にしない」。七回に一挙8点を挙げ、逆転勝利につなげた。
選手たちに強さの秘密を聞くと同じ答えが返ってくる。「仲がいいから」
2010年に春夏連覇を果たした興南や甲子園常連の沖縄尚学といった私学勢には県内全域から選手が集まる。県立の嘉手納はベンチ入り18人中15人が、学校のある嘉手納町と隣の読谷村の三つの中学校出身だ。
集まる人材に限りがあるが、少年野球の頃からの顔なじみが多い。週1回のオフの日もサッカーやバレーをするなどいつも一緒。試合中、失策があっても互いに叱ることはない。「厳しくやったらあせっちゃうけど、誰かがカバーすればチャラになる」と中堅手の幸地諒承(こうちりょうすけ)君(3年)は話す。
日ごろ、「地域の子だけでもやれるんだと示したい」と話す大蔵宗元監督は試合後、「一つ勝てて成果を出せた」と手応えを語った。大石君は「大量点差であきらめていたチーム。成長できた」と満足そうに話した。(伊藤繭莉、井石栄司)