楽器を高々と突き上げて演奏する部員たち=愛知県小牧市、川津陽一撮影
作業着とヘルメット姿で演奏する愛知県立小牧工業高校のマーチングバンド部が売れっ子になりつつある。男子生徒のひたむきさと型破りのパフォーマンスが受けて、音楽祭やイベントに招かれる機会が増えている。
12日には、3年生にとって最後の舞台となる卒業演奏会があった。授業で使う水色の作業着と黄色のヘルメット姿の男子部員20人が体育館に勢ぞろい。
「気合入れて頑張るぞ」。主将の太田竣君(18)=自動車科3年=のかけ声に、部員たちは大声で「オス!」。本番前、お決まりの腕立て伏せを始めた。
楽器を構え、緊張した面持ちで舞台にひざまずく。「ドーン」。ドラムの大きな音が、演奏会の幕開けを告げた。部員たちが、楽器を演奏しながら舞台を降りてきた。オープニング曲はミュージカル「ラ・マンチャの男」より「見果てぬ夢」。トランペットの音が高らかに響くと、観客席から大きな拍手がわいた。
マーチングバンド部の名前は「ENGINEER REGIMENT」。直訳だと「エンジニアの連隊」だが、「ものづくりを支える技術者を目指す」との意味が込められている。
2008年に赴任した自動車科の澤田直樹教諭(44)が、休眠状態だった吹奏楽部を再生させた。7人でスタートしたが、初心者ばかりで音符も読めない。澤田教諭は楽譜を簡単にアレンジし、楽器を押さえる指を「1、2」と書いて教えた。
最初のうちは座って演奏するのがやっと。演奏がさまになってきた12年、「マーチングの方が見栄えもいいし、工業高校らしく作業着を着せたらおもしろいのでは」と、文化祭で初めて作業着姿でマーチングを披露した。翌年には、同県小牧市の吹奏楽フェスティバルに初参加。懸命なパフォーマンスに喝采が送られた。うわさが広まり、市民まつりや自動車学校のイベントに呼ばれるようになった。作業着姿がすっかり定着し、部員たちも「型にはまらない自由さが楽しい」と話す。
昨年11月、同県犬山市の病院…