国連の作業部会が核兵器禁止条約の交渉開始を国連総会に勧告する報告書を採択したことに、被爆地では期待が高まっている。一方で、条約制定に消極的な日本政府の姿勢には、落胆と怒りの声があがった。
核兵器禁止条約に向けた報告書採択 日本は棄権
国連の核軍縮部会、日独など修正要求 「法的禁止」巡り
9日に長崎市の平和祈念式典で被爆者代表として「平和への誓い」を読んだ井原東洋一さん(80)は「小さな一歩だが、核兵器禁止について議論していくことが非常に重要。被爆者が長年訴えてきた核兵器のおそろしさがわかってもらえた成果だ」と歓迎した。
「誓い」では、日本政府に対して「核兵器禁止のために名誉ある地位を確立してほしい」と求めた。しかし、作業部会で日本は採択を棄権。井原さんは「日本は核保有国と非保有国を橋渡しし、核廃絶を先導するべき立場なのに許せない。他の被爆者団体の代表らと相談して日本政府に抗議したい」と憤った。
長崎市の田上富久市長は取材に「勧告が採択され、前に進めるようになったことは大きな成果」と評価した。平和祈念式典で読み上げた平和宣言で、作業部会に参加していない核保有国に議論に加わるよう呼びかけ、今秋の国連総会で核兵器禁止条約の協議を始めるよう求めていた。
日本の棄権については「非常に残念。日本政府には一歩前に進むリーダーシップを発揮してもらいたい」と語った。(八尋紀子、山野健太郎)