装着の様子=島根県出雲市塩冶町
島根大は、夜間看護で耳に掛けて使うLEDライトを開発したと発表した。ハンズフリーで、患者に気兼ねせずに手元を照らす明かりが欲しいという同大医学部付属病院の看護師の願いが形になった。島根県出雲市内の企業との共同開発で今秋の商品化を目指すという。
「入院患者にとって急に照らされるライトはまぶしく不快。でも、おむつ交換や口の中のケアなど夜間に両手を使った細かい作業は多い。両立させるようなライトが欲しい」
そう思っていた看護師の矢野牧江さん(57)は2年前の秋、大学が医学部と付属病院の職員を対象に実施した医療機器の開発用のアンケートに要望した。懐中電灯を使っている普段の業務経験を元に、耳掛け式なら視線とライトの照らす方向が重なり、両手で作業に集中できると考えたからだ。
これに大学側が「新規性があり、薬事法の承認などの手続きも不要」と注目。昨年3月から、LED照明器具の製造販売会社「Doライト」(同市長浜町)、PCタブレット製造会社の「島根富士通」(同市斐川町)の両社と共同研究を始め、今年7月に試作品が完成した。
試作品は長さ約57ミリ、幅25ミリ、厚さ15・5ミリのライトをヘッドバンドで耳の上付近に固定する。体を斜め前に傾けるとライトが点灯。広角ライトとスポットライトに切り替えられ、手元から40~50センチ先の直径約20センチの広さを、手作業には十分な約100ルクスの光量で照らす。充電式で重量はバンドを含め37グラムに抑え、ライトがゆっくりつけ消えするフェード機能も備える。価格は1万5千円程度を想定しているという。
今月末まで約20人の看護師が病棟などで使ってみてさらに改良するという。矢野さんは「今のところ患者さんからまぶしいと言われたことはない。要望からわずか1年半で形となって使えるのが驚き」と話す。(今林弘)