教科書会社が検定中の教科書を教員らに見せ、意見を聞いたことへの「謝礼」などを渡していた問題で、文部科学省は金品や酒食などを提供した会社に対し、教科書検定の申請を認めない新制度を設ける方針を決めた。申請が不可能になれば、会社は教科書を発行できなくなる。
文科省は8日に開かれる「教科用図書検定調査審議会」に具体的な制度設計を要請する。2017年夏に省令を改正し、18年度の検定からの導入を目指す。
新制度は、小中学校や高校の教科書を発行する会社が、教員や教育委員会側に検定中の教科書を見せ、金銭や中元・歳暮などを提供。その結果、教科書の採択に影響する可能性がある場合に適用する。文科省が「不公正」と判断すれば、次の検定で申請を受理しない。不公正だと判断する基準や、罰則の対象を該当する教科書だけとするか、その教科書を含む教科全体とするかなどは、審議会で検討する。
いまの法令では、国費で負担する小中学校の教科書の場合、贈賄や独占禁止法違反など明確な法令違反があれば、教科書発行者の指定そのものが取り消される。高校についても採択後、該当する教科書の発行を認めない措置をとれる。だが、いずれも採択をやり直す必要があるため、教育現場への影響が大きく、過去に一度も適用されていなかった。
教科書会社の謝礼問題をめぐっては、公正取引委員会が7月、独禁法違反のおそれがあるとして9社に金品の提供をやめるよう警告した。各社は検定の申請後、教員らに金品や酒食、中元、歳暮を提供していたが、文科省の調査に対して「意見聴取への謝礼だった」などとして採択につなげる意図を否定している。(水沢健一)