映画「突貫小僧」の一場面=おもちゃ映画ミュージアム提供
独特の映像美が海外でも人気の映画監督、小津安二郎(1903~63)の初期の無声映画「突貫小僧」(29年公開)の新たなフィルムが発見された。公開当時のフィルム(上映時間38分)はいまだ行方不明で、88年に家庭向けに再編集された短縮版(14分)が見つかったものの、冒頭部分などのコマが欠けていた。今回、その家庭向け短縮版がほぼ完全な形で出てきた。
6日にあった京都国際映画祭の会見で発表された。
「突貫小僧」は、松竹にいた小津の監督12作目にあたる。少年を誘拐しようとした人さらいが、やんちゃ過ぎる少年に手を焼いて音を上げる喜劇。小津の無声映画の傑作「生れてはみたけれど」(32年公開)などに出演した名子役、青木富夫のヒット作だ。
劇場用フィルムの行方は知れないが、88年に映画評論家の山根貞男さんが発掘した9・5ミリフィルムの短縮版によって「突貫小僧」の一端がわかった。今回、九州の映画ファンの遺族が「おもちゃ映画ミュージアム」(京都市中京区)に寄贈した中に、その短縮版には欠けていた、タイトルカットや字幕、子どもがじゃんけんをする場面などが残るフィルムがあった。
現物を確認した山根さんによると、保存状態はいいという。山根さんは「戦前の日本映画の多くが失われているが、今また新たに見つかるとは。幻の名作のフィルムが、まだどこかにあるのではと期待させてくれる」と語った。
おもちゃ映画ミュージアムの代表で、大阪芸術大学教授の太田米男さんは「きちんと復元して、多くの人に見てもらいたい」と話す。「突貫小僧」は10月13日に開幕する京都国際映画祭で上映される予定。(伊藤恵里奈)