前線で重傷患者が出たという想定で、自衛隊が米海兵隊のオスプレイを使い、治療設備のある海自護衛艦へ陸自隊員を搬送する訓練=昨年9月、米カリフォルニア州沖
防衛省は21日、医師がおらず連絡も困難な戦場の最前線でも、緊急の救命行為を自衛隊員が行えるようにする新たな制度を創設することを明らかにした。国内の有事で、医療拠点まで時間がかかる離島などでの戦闘を想定。約800人いる准看護師と救急救命士両方の資格を持つ自衛隊員から選抜し、来年度から養成を始める。
対象にするのは、砲撃を受けて口や鼻がふさがれた場合に首から気道を確保する▽腹を撃たれて肺から漏れだした空気が胸にたまらないよう針を刺す▽地雷で四肢が吹き飛ばされ大量に出血した際に輸液や輸血を行って出血性ショック死を防ぐ、といった救命行為。
同省によると、米軍がイラク戦争やアフガン戦争の最前線で取り入れ、救命率が向上。2010年から全軍に広げた。英豪軍なども導入しているという。自衛隊が南西諸島の防衛を強化する戦略を進めるなかで、昨年4月から有識者による検討会で協議を続けていた。
自衛隊はここ数年、離島防衛を想定した日米共同訓練やPKO訓練の際に、最前線での隊員の救護や野戦病院への搬送といった訓練に本格的に取り組み始めた。ただ、今回の新制度について同省の担当者は「日本国内での有事を前提に検討したもので、PKOなどの海外任務は対象にしていない。海外任務では、自衛隊の医官の指示の下に、医療行為ができる環境を基本的に整えている」と説明している。(福井悠介)