爆発的噴火から一夜明けた阿蘇山。中岳火口からは白煙が立ち上り、周囲は火山灰で覆われていた=9日午後3時38分、熊本県阿蘇市、朝日新聞社ヘリから、河合真人撮影
阿蘇山の爆発的噴火から1日経った9日、ふもとの県道の通行規制は解除され、観光地の草千里ケ浜には客足が戻り始めた。ただ熊本地震からの復興を進める地元では、風評被害を心配する声も出ている。国は現地に専門家を派遣し、降灰の状況などを調べた。
熊本県阿蘇市の観光地は9日、いつも通りの表情を取り戻した。前日に閉鎖された県道阿蘇吉田線は、中岳を望むことができる草千里ケ浜までの通行を再開。周辺に降灰はほとんどなく、観光客が草原や中岳火口を写真に撮っていた。
同県菊陽町からバイクで来た会社役員松原美樹(よしき)さん(57)は、海外赴任から戻って久しぶりに阿蘇を走ろうと楽しみにしていたという。「ここまで来られることをネットも使って発信します」と話した。夫婦で訪れた高松市の会社員田辺俊文さん(55)は、「やっと来られた九州。予定どおり中岳を見に来ました。九州にまた来ます」と語った。
熊本地震の影響で休業し、10月1日に営業を再開したばかりの草千里の物産館「グリーンパーク」。店頭で接客していた若井賢一さん(42)は「予想よりも来てもらった」と安心した様子を見せながらも、「噴火のイメージが阿蘇の全体に及ぶのが心配」と述べた。
この日は県の蒲島郁夫知事が阿蘇市を視察。市役所で降灰の状況や、灰が付着した農作物の様子などについて説明を受けた後、阿蘇神社の門前町で商店主や観光客らと語った。市や商店主からは観光への風評被害への懸念が伝えられた。知事は報道陣に「風評被害は大事な問題。阿蘇全部が噴火の影響を受けていると見られないよう、正確に情報を発信していきたい」と話した。(後藤たづ子)