オートファジー(自食作用)の仕組み
「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる細胞内の新陳代謝の現象の中で、たんぱく質を分解する過程の解明につながる発見をしたとする論文を、水島昇・東京大教授(細胞生物学)らのチームが21日、米科学誌サイエンス電子版に発表した。
ノーベル受賞業績の「オートファジー」、どんな仕組み?
オートファジーは、その仕組みを見つけた業績で大隅良典・東京工業大栄誉教授が今年のノーベル医学生理学賞に決まったが、わかっていないことも多い。水島さんはかつて大隅さんのもとで研究をしていた。
オートファジーは、細胞内に二重の膜が現れて不要なたんぱく質などを取り囲んだ後、分解酵素を持つ袋状の器官「リソソーム」と融合することで起きる。
今回、水島さんらは哺乳類の正常な細胞と、特定のたんぱく質の結合体をなくした細胞を比較。正常な細胞では、リソソームと融合後、不要なたんぱく質を包んだ内側の膜の分解が約7分で始まるのに対し、異常な細胞では60分以上かかっていた。このたんぱく質の結合体が内側の膜の効率的な分解に必要であることが示されたという。
また、分解後も残る外側の膜は正常細胞では球形だったが、異常な細胞では楕円(だえん)形になっていた。このたんぱく質の結合体がないことで膜の形成が不十分だったとみられるという。
水島さんは「オートファジーの仕組みを、さらに明らかにする糸口になる」と話す。(南宏美)