会議終了後、取材に応じる俳優の生稲晃子さん=24日午後、首相官邸、角野貴之撮影
病気の治療と仕事の両立をどう支援していくかがテーマとなった24日の「働き方改革実現会議」の第2回会合。注目を集めたのは、有識者議員として参加する俳優の生稲(いくいな)晃子さんの提言だった。自身のがん治療の経験をもとに政府に対して具体的な支援策の案を示した。
麻木久仁子さん「がんに仕事奪われる時代じゃない」
「がんになった社員に対して、主治医、会社、産業医・心理カウンセラーの『トライアングル的な連携サポート』ができるのではないか」
生稲さんは、首相官邸4階の大会議室で安倍晋三首相を前に切り出した。2011年に乳がんを発症。摘出手術を受け、今も治療を続ける。がん治療の副作用には、抗がん剤による脱毛やむくみのように周囲から見えやすい症状だけでなく、別の治療による倦怠(けんたい)感やのぼせ、軽いうつ症状など「他人に見えにくい副作用」がある。このため、働く意欲を維持し続けることが大変で、モチベーションの低下を理由に会社を辞めてしまう人も多い、と指摘した。
生稲さんは、患者を心理面でサポートする必要性を強調。治療と仕事の両立支援の「トライアングル」の一角に、産業医や心理カウンセラーを位置づける支援策を提案した。具体策として、患者ができることとできないことを示した意見書を主治医が作る▽会社が産業医、カウンセラー、本人を交えて業務内容を決める▽治療状況によって業務内容を見直せるようにする、などを挙げた。
がん患者の3人に1人が20~64歳の「就労可能年齢」でがんにかかると言われる。厚生労働省の10年の調査によると、治療と仕事を両立している人は32万5千人にのぼる。一方、静岡県立静岡がんセンターの研究者らが13年に約4千人を対象に行った「がんの社会学」に関する調査では、34・6%が診断後に退職や解雇で仕事を失っている。
第1次政権時代に病に苦しんだ安倍首相にとって、治療と仕事の両立は思い入れの強い課題だ。生稲さんの提案に「いいアイデアをいただいた」と応じ、政府として具体策を検討していく方針と表明した。(千葉卓朗)