名古屋大学の研究チームが、プラズマを使って脳腫瘍(のうしゅよう)や卵巣がんを小さくする治療法を開発した。治療の難しいがんの治療法開発につながるという。研究成果が31日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に掲載された。
プラズマは、電気を帯びたガスで、イオンや電子、光などの粒子からなる。大気と同じ圧力や生体に近い温度でプラズマを生成する技術が発展し、プラズマを使ったやけどの治療や止血など医療への応用が研究されている。
名大病院先端医療・臨床研究支援センターの水野正明病院教授らの研究グループは、体液の補充などに使う点滴「乳酸リンゲル液」にプラズマを照射。それを脳腫瘍や卵巣がんのがん細胞を移植したマウスに注射すると、少なくとも30%以上がん細胞を縮小させる効果があったという。点滴に含まれる乳酸ナトリウムの構造の一部が、プラズマを当てたことで変化し、がん細胞に効いたとみている。
がん細胞が腹の中や脳の髄液などに散らばる播種性(はしゅせい)のがんでは、手術や放射線、抗がん剤など従来の方法では治療が難しい。プラズマを当てた点滴は「第4の治療法」として期待される。水野病院教授は「病院で使われている点滴薬でプラズマの効果を示したことで、臨床応用も視野に入った」と話している。(月舘彩子)