光干渉断層計(OCT)による検査の様子。目薬を差して瞳孔を開く必要もなく、撮影は数秒で終わる
目の底の病気を早期発見するために、名古屋市立大と情報システム会社「クレスコ」(東京都)が人工知能(AI)を使った画像診断システムを開発した。80%以上の確率で診断に成功し、人間ドックなどの健診での利用をめざしているという。
AIが診断するのは「光干渉断層計(OCT)」と呼ばれる網膜の中心を撮影した画像。機器の前に座るだけで、数マイクロメートルの解像度で目の底の様子を撮影できる。必要な時間は数秒。自覚症状が無くても、老廃物がたまっていたり、異常な血管が生えていたりしないかなど病気の初期段階がわかるという。
研究には、健康な目も含めた300人の両目のCT画像1200枚を使用。そのうち1100枚には、20年以上の臨床経験を持つ医師の診断をつけ、AIに学習させた。残り100枚の画像をAIに診断させ、1枚につき可能性の高い診断名を五つ挙げさせた。1番目に挙げた診断名が医師の診断と合致したのは83%、2番目までに合致したものを加えると90%だった。残り10%は症例数が少ない病気だったという。
OCTはすでに普及しているものの、一つの病気でも多くの異常があり、複数の病気を併発していることも多いため、画像の診断には専門的な知識と経験が必要だ。研究チームの名市大大学院医学研究科、安川力(つとむ)准教授(視覚科学)は「すでにスクリーニングに使えるレベルは突破できている。人間ドックにOCT検査とAIによる診断を導入すれば早期発見、早期治療につながる」と期待する。検査機器を開発する企業と共同で、AIの診断システムを組み込んだOCT検査機器を開発中だという。(月舘彩子)