明治神宮大会で本塁打を放つ早稲田実の清宮=角野貴之撮影
高校野球は明治神宮大会が15日に決勝があり、今年の公式戦が終わった。昨夏の甲子園をわかせた早稲田実(東京)の清宮はさらなる成長を見せ、神宮王者の履正社(大阪)も大型スラッガーの安田が活躍。今夏の全国覇者・作新学院(栃木)は秋の関東も制した。来春の選抜大会の選考資料となる、秋の戦いを振り返る。
動画もニュースも「バーチャル高校野球」
「GO! GO! GO!」。清宮がベンチで叫ぶこの言葉が早稲田実のスローガンになった。どんな状況でも前を向いて戦う。そんな意味がある。
この秋、主将になった清宮の声はかれっぱなしだった。打者としてだけでなくリーダーとしても高い資質を発揮し、チームを明治神宮大会準優勝に導いた。
打席では相手バッテリーの警戒が厳しい中、冷静に結果を出した。東京都大会は1次予選も含め、8試合で27打数9安打12打点、4本塁打。神宮大会では3試合で7打数5安打2打点、7四死球。決勝では高校通算76号の本塁打も放った。
ただ、上位進出の要因は清宮の存在だけではない。後を打つ1年生の4番・野村は「清宮さんが出塁すると気合が入る」。都大会決勝ではサヨナラ本塁打を放ち、神宮大会でも6打点を挙げた。清宮は「投手陣も抑え方がわかってきたと思うし、みんな成長してくれた。主将としてうれしい。来年に大きくつながる1年でした」と振り返った。
その早稲田実に勝って秋の頂点に立ったのは、近畿王者の履正社。高校通算44本塁打の3番安田は清宮と同じ左打者として、「意識しないようにとは思っていたけど、刺激になった」。
神宮大会では安田を中心とした強力打線が力を発揮。エース右腕竹田もスライダーの切れが抜群で、来春の選抜大会でも上位進出の有力候補になりそうだ。
選抜に「連覇」がかかる2チームも、出場を有力にした。
「夏春連覇」を狙う作新学院は新チームのスタートが8月下旬と遅れた。主将の添田は「秋季大会まで練習試合を5、6試合しかできなかった。実力はまだまだだけど、先輩方からは攻めていく姿勢とうまくなりたいという意識の高さを学びました」。
県大会を制すと、関東大会でも今井(西武ドラフト1位)から背番号「1」を受け継いだ大関が3試合連続の1失点完投。身長172センチの左腕は「(速球派の)今井さんとはタイプが違う。この冬に低めへの制球力を磨きたい」と春を見すえる。
今春の選抜で優勝し、「春連覇」を目指す智弁学園(奈良)も近畿大会で8強入り。春も中心打者として活躍した福元、太田が残り、実力は十分だ。
部員不足という苦難と戦うチームの躍進も光った。
東北大会には、選手10人で岩手県大会で準優勝した不来方(こずかた)、四国大会には部員16人で高知県大会を40年ぶりに制した中村が出場。いずれも初戦で敗れたが、県の21世紀枠推薦校に挙げられており、吉報を待つ。(坂名信行、山口史朗)