工業廃棄物と水から水素を効率よく発生させる技術を、大阪大の研究グループが開発した。水素ガスは爆発の危険性があり、貯蔵や運搬が課題となっているが、この技術を使えば必要な時に安全に水素を取り出せ、持ち運び可能な水素発生装置への応用も期待できるという。24日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。
大阪大太陽エネルギー化学研究センターの金田清臣特任教授らのグループは、シリコーン工業などで電子機器のコーティング剤をつくる際などに廃棄物として出るヒドロシランという化合物に着目した。また、金を1・9ナノメートル(ナノは10億分の1)まで小さくした「金ナノ粒子」の触媒を作る技術を開発。ヒドロシランと水を混ぜた溶液にこの触媒を浸した時だけ、室温で水素を効率よく発生させることに成功した。
水素は次世代エネルギーとして注目されているが、運ぶ際に高圧でボンベに圧縮するなど大量のエネルギーが必要になる。ヒドロシランとは別の化合物から水素を発生させる技術も開発されているが、生成を制御できないのが課題だった。金田特任教授は「この技術なら非常に小型、軽量で持ち運べる。燃料電池に組み込むなどポータブル水素発生装置の開発に応用できる」と話す。(佐藤建仁)