「ディスプレイを着る」という発想はあっただろうか。部品の機能、紡績方法、織物の形態を一体に融合した私たちの着ている服でニュースをチェックし、情報を送受信し、メモを取る――研究者は近年、これを目指し取り組んでいる。
復旦大学高分子科学学部の彭慧勝教授が率いる研究チームはこのほど、ディスプレイの製造と織物の製織プロセスの融合に成功した。高分子複合繊維交錯点に多機能マイクロ発光部品を集積し、繊維電極間の電界分布の独特な法則を明らかにし、広範囲フレキシブル表示織物とスマート集積システムを実現した。
関連研究成果は北京時間11日、「広範囲表示織物及びその機能の集積システム(Large-area display textiles integrated with functional systems)」のタイトルでネイチャー誌に掲載された。査読者は「重要かつ価値ある新知識を生み出した」と評価した。
彭氏はその発光繊維について、「これらの直径0.5ミリメートル弱の繊維材料は色がそれぞれ異なり、一見したところ日常生活における一般的な糸に似ている。だが、これに電気を流すと、明るい光を放つという独特な一面が見えてくる」と説明した。
柔らかく直径がわずか数十から数百ミクロンの繊維において、プログラム制御可能な発光ドットアレイをいかに構築するか。これはチーム、さらには同分野を悩ませる一大難題だ。
彭氏のチームは速やかに発想を切り替えた。織物の製織プロセスにおいて、タテ糸とヨコ糸の交錯は自ずとディスプレイのピクセル配列に似たドットアレイを形成することができる。
チームはこれをヒントに、2種類の機能性繊維の開発に目をつけた。これは発光活性材料を持つ高分子複合繊維と、透明で導電性を持つ高分子ゲル繊維のことだ。この2者の織物生産プロセスにおけるタテ糸とヨコ糸の交錯によりエレクトロルミネッセンスセルを形成し、そして効果的な回路制御により新型フレキシブルディスプレイ織物を実現した。
研究チームのメンバーが見せてくれた普通のパーカーには、青い光を発する繊維で作った復旦大学の校章が刺繍されていた。電源を入れると、青い校章のデザインが室内ではっきり見え、さらには制御によりモードを切り替えることができた。
彭氏は「ディスプレイ織物内には独特な接合構造があり、発光タテ糸と導電ヨコ糸の交錯によってできている」と説明した。横の断面を見ると、うちの1本が発光材料が塗られた導電糸で、もう1本の透明導電繊維が製織することによりそのヨコ糸と接合されていた。
彭氏は「交流電圧を加えると、発光繊維にある高分子複合発光活性層が接合ポイントで電界によって刺激され、一つ一つの発光ピクセルを形成する。こうすることで電界の励起を受け、電極と発光層は物理的な接合により効果的な発光を実現できる。この方法は発光部品と織物の製織プロセスを統合できる。工業化製織設備を利用することで、長さ6メートル、幅0.25メートルの、約50万個の発光ドットを含む発光織物を作れる。発光ドット間の最短距離は0.8ミリで、一部の実用シーンにおける分解能の需要を大まかに満たせる。発光材料を切り替えることで、複数の色の発光ユニットを実現でき、多彩なディスプレイ織物が得られる」と説明した。
チームは導電繊維ヨコ糸の力学的性能に対して懸命に努力し、溶融押出により弾力性に富む透明高分子導電繊維を製造した。製織過程において、同繊維は張力の作用により発光繊維と接触するエリアで弾力的に形状を変えるとともに、織物の交錯の連動構造によって固定される。
実験結果によると、2本の繊維がスリップ、回転、湾曲する状況において、交錯発光ドットの明度の変動範囲が5%以内に抑えられる。ディスプレイ織物は折り曲げ、引っ張り、押さえつけにより何度も変形しても安定的な明度を保ち、洗濯機による百回ほどの洗濯に耐えられる。
極地科学調査や地質調査などの屋外活動シーンにおいて、服を軽くタップするだけでリアルタイムで位置情報が表示され、服がナビゲーションをしてくれる。ディスプレイを着ることで、言語障害者はこれを効率的でスムーズな交流・意思表示ツールにできる。これらの想像に過ぎなかった光景は近い将来、人々の日常となるかもしれない。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年3月11日