ボブ・ディラン=ウドー音楽事務所提供
今年のノーベル文学賞を受賞した米国のシンガー・ソングライターのボブ・ディランさん(75)の受賞スピーチが10日夜、ストックホルム市庁舎で行われた晩餐(ばんさん)会で披露された。ディランさんは式典を欠席したため、米国のラジ駐スウェーデン大使が代読した。
全文は以下の通り。
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こんばんは、皆様。スウェーデン・アカデミーの会員の皆様、今夜出席されているその他の名高い招待客の皆様、心からのごあいさつを申し上げます。
皆様とともに出席することができず、申し訳ありません。しかし、気持ちの中では間違いなく皆様と共にあること、そして、このような名誉ある賞を受賞することを光栄に思っていることをどうか分かってください。
ノーベル文学賞を受賞することは、想像すらできなかった、予想できなかったことです。
若い頃から、キプリング(1907年の文学賞受賞者)、ショー(25年)、トーマス・マン(29年)、パール・バック(38年)、アルベール・カミュ(57年)、ヘミングウェー(54年)といった卓越した偉大な人々の作品に慣れ親しみ、読み、吸収してきました。
学校で教えられ、世界中の図書館に収められ、敬意を込めた口調で話題にされる作品を書いた、これら文学の巨人たちにいつも深い感銘を受けてきました。それらの名前に自らが今、列せられることは本当に言語に絶することです。
これらの男女が、自分自身がノーベル賞の名誉を授かることについて考えたかどうかは私には分かりませんが、本、もしくは詩、戯曲を書いたことがある世界中の誰もが、深い心の奥にその秘密の夢を抱いていると思います。おそらく、あまりにも深い部分にしまい込まれているため、そこにあることにすら気づかないのです。
もしも誰かが私に、ノーベル賞受賞のわずかなチャンスがあるとこれまでに言っていたとしたら、月面に立っているのと同じくらいの確率だと考えなければならなかったでしょう。事実、(ノーベル文学賞の該当者がなかった)私が生まれた(1941)年とその後の数年間、この賞を受賞するのに十分ふさわしいと考えられる人はこの世界に誰もいませんでした。だから控えめに言って、私はとても珍しい集団の中にいると認識しています。
この驚くような知らせを受けた…