日本総研・山田久チーフエコノミストの顔
「同一労働同一賃金」の実現に向け、政府がガイドライン(指針)案をまとめた。非正社員の待遇改善が狙いだが、企業は労務管理の見直しを迫られそうだ。負担増につながる可能性もあり、早くも懸念の声が出ている。
同一労働同一賃金へ政府が指針案 格差固定の懸念も
非正社員は今や働き手の4割近くを占める。正社員と同じような仕事をしているのに、正社員と待遇差があるケースも目立つ。企業にとってとくに影響が大きいとみられるのが賞与だ。
厚生労働省が2011年に実施したパート社員の実態調査によると、正社員とパートがいる事業所のうち、賞与を正社員に支払ったのは8割以上だが、パート社員に支払ったのは4割以下だった。支給していても、非正社員には「寸志」のように一定の低額を支払うケースも多いとみられるが、こうした支給方法は今後、認められなくなる可能性がある。小売りや外食など非正社員を多く抱える業界では、企業経営に及ぼす影響は小さくない。
牛丼チェーンを展開する吉野家ホールディングスは、2万人を超える非正社員を抱える。現金での賞与支給はしていないが、レストランなどで使えるグルメカードや牛丼無料券を20年以上前から配布してきた。今回の指針案について広報担当者は「コスト増にもつながるので、すぐに対応できるものではない」。パート従業員らに賞与を支給していない外食大手も「指針案に従えば負担が増える。影響は大きい」(広報担当者)と警戒を隠さない。
一方、総合スーパーを展開する…