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不寛容なトランプ氏会見 都合悪い記事は「偽ニュース」

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11日、ニューヨークで記者会見するトランプ次期米大統領=ロイター


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トランプ次期米大統領が20日(日本時間21日)に就任するまで残り1週間。大統領選後初めて記者会見に臨んだトランプ氏は、政治信念や具体的な政策ではなく、自分に都合の悪い記事を掲載したメディアへの批判に時間を割いた。敵とみれば批判に耳を貸さない不寛容な姿勢は、政権の座に就いても変わらないことを印象づけた。


特集:ドナルド・トランプ氏


ニューヨーク・マンハッタンにあるトランプ・タワー内に設けられた会見場。最初からトランプ氏側はけんか腰だった。


「始める前に、昨晩報じられたニュースの内容について触れたい」。11日午前11時(同12日午前1時)の開始予定時刻を10分過ぎた頃、マイクを持ったのはホワイトハウス報道官に就くショーン・スパイサー氏だった。「選挙戦であからさまに敵対的だった左翼ブログが、わいせつで完全に間違った情報を就任数日前に報じるのは率直に言って常軌を逸しており、無責任だ」


トランプ氏が演壇に登ると、会場の約250人の記者団を取り囲むように、拍手喝采を送る役回りのスタッフが集まった。


「記者会見は、とてもなじみのある領域だ」。トランプ氏はそう切り出すと、「会見をやめていたのは、非常に多くの不正確なニュースがあるからだ」とやはりメディア批判を繰り返した。


怒りの矛先は、米ネットメディアのバズフィードやCNNが流したニュース。ロシアがトランプ氏に関する不名誉な情報を持っており、そのことを米情報機関がトランプ氏に伝えたという報道だ。バズフィードは、トランプ氏がモスクワのホテルで、性的な行為をしたという内容を含む35ページの文書を公開したのだ。


トランプ氏は文書を報じなかった社を持ち上げ、バズフィードを「ゴミの山」と切り捨て、「彼らは結果に苦しむことになる」と威嚇した。気に入らないとレッテルを貼り、徹底的に報復する同氏のスタイルだ。


最前列にいたCNNのホワイトハウス担当のジム・アコスタ記者が「報道機関を攻撃するなら、質問の機会をいただけませんか?」と発言。声を張り上げ、権力者の一方的な批判に対し、質問の機会を求めた。


だが、トランプ氏は、アコスタ氏の質問を「あなたじゃない」と遮って他のメディアの記者を当てようとした。


アコスタ氏「我々の機関を攻撃している。機会を下さいませんか?」


トランプ氏「静かにしなさい。無礼にするな」「あなたには質問はさせない。あなた方は偽ニュースだ」


トランプ氏は最後まで記者に質問を許さなかった。


また、大統領職と、トランプ氏が手がけるビジネスが「利益相反」とならないよう、すべての役職を退き、長男と次男に経営権を譲ると発表した。関連して記者が「大統領選で、納税記録の資料を公開しなかった」と食い下がると、「そんなものを気にしているのは記者だけ」と回答をはぐらかした。米メディアは、トランプ氏の回答こそ「虚偽」と批判した。


オバマ政権の方針を変え、ロシアのプーチン大統領と関係改善を狙うトランプ氏。会見では「プーチンがドナルド・トランプを好きならば、それは負債ではなく、アセット(資産)と考える」。ビジネス用語を用い、外交交渉を「ディール」(取引)ととらえる「外交観」も垣間見られた。一方で、国境の壁建設で関係が悪化しているメキシコについては「米国を利用してきた」と批判した。


トランプ氏は会見の翌朝もツイッターで「CNNは完全にメルトダウンしている」と攻撃を続けた。


「もしあなたがインターネットで見知らぬ人との議論にうんざりしたら、現実世界のだれかと議論したらいい」。立場の違いを対話で乗り越える。多様性と寛容さが米国の民主主義の原動力――。トランプ氏の会見の前日、退任演説でこう力を込めたのはオバマ大統領だ。新旧大統領の「落差」を米社会はどう受け止めるのか。まもなくトランプ氏の米国が始まる。(ワシントン=佐藤武嗣、五十嵐大介)



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