涙ながらにコメントを読み上げる、高橋まつりさんの母親の幸美さん=20日午後5時21分、東京・霞が関、遠藤啓生撮影
過労自殺した高橋まつりさんの母親、幸美(ゆきみ)さんが20日の記者会見で読み上げた文章「会社と合意書調印にあたって」(全文)は次の通り。
電通が解決金支払いを約束 高橋さん遺族側と合意書
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本日、会社(電通)との合意書調印に踏み切りました。
調印を決意した理由は、
娘が業務により亡くなったことについて、会社が責任を認め、謝罪したこと、
電通の社風・過重労働の象徴であった鬼十則を、会社が社員手帳から削除したこと、
娘が死ぬほど辛(つら)かった、死の原因となった深夜残業・休日出勤について、会社側はこれまで私的情報収集・自己啓発などと扱い業務として認めていなかったが、会社は、これを改め、サービス残業をなくすことを約束したこと、
会社が、深夜残業の原則禁止など、改革をすでに始めていること、
会社が、パワハラ防止のために全力を尽くすことを約束したこと、
会社が、業務の改善と改革の実施状況の報告を、今後、遺族側に定期的に行うことを約束したこと、
業務の改善と改革に向けて、役員・管理職が研修会を行い、遺族側の話を直接聞く場を設けることを約束したこと、
などです。
石井社長が昨年末に辞任の発表をされましたが、社長交代・役員交代が行われたとしても、二度と同じ悲劇を繰り返さないように、改革に向かってほしいと思います。
以上、会社との合意には至りましたが、会社側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、娘は二度と生きて帰ってくることはありません。
しかし、まつりが今でも東京のどこかで元気に暮らしているような気がしてなりません。
テレビに映る娘の姿を見る度に「ああ、本当にまつりは死んでしまったんだなぁ。。。」と茫然(ぼうぜん)とします。
まつりに会いたい。
まつりを抱きしめたい。
でも二度と叶(かな)うことはないのです。
娘を失った悲しみが癒えることは決してありません。
しかし、娘の尊厳を守るためにした労災認定の発表で、娘は労働問題のシンボルになり、日本中の働く人に大きな波紋を投げかけることになりました。
娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの死を無駄にしないためにも、日本に影響力のある電通が改革を実現してほしいと思います。
深夜残業禁止令を出しても、業務量や人員の調整・コントロールをしないと、時間規制は実現できません。業務量などの現状を改革していくことに対しては、企業の中に反対する人もいるでしょうが、強い決意をもって改革を実行していただきたいと思います。
政府には、「働き方改革」についての真剣な議論によって、36協定延長時間の上限規制、サービス残業に対する罰則を含む規制の強化、サービス残業を助長するような固定残業制の禁止、勤務間インターバル制度の導入など、働く人を守るために法律改正をしてほしいと強く希望します。
最後になりましたが、私どもを励まし、支援して下さったすべての方々に心より感謝いたします。
以上