東芝は23日、水力発電所の水流を調整する機器を工場から大手電力会社に出荷する際の検査で、データの捏造(ねつぞう)があったことを明らかにした。東芝は「検査担当者の意識の問題だった」と説明し、組織的な関与は否定している。
東芝によると、昨年11月に京浜事業所(横浜市)で製造した機器の検査を担当する品質保証部の社員2人が、機器の溶接部について見えにくい傷を調べる検査をしていないのに、したように装って記録を作成した。その後、発注した電力会社が立ち会った検査で、溶接部に傷があるのを見つけて指摘。東芝が改めて確認したところ、担当の2人が、検査をせずに記録を捏造したと認めた。機器の傷を修復して電力会社に納め、関係した社員は処分したという。
この問題は今月中旬の週刊新潮の報道がきっかけで発覚。東芝は朝日新聞の取材にも基本的な事実関係を認めた。同事業所では原子力、火力発電所の機器も製造している。東芝は「ほかには捏造がないことを調査で確認した」(広報)と説明しており、電力会社も他の機器に及ぶ再検査は求めておらず、新たな損失は出ないという。問題を公表していなかったことについて、東芝は「個別の取引に関することであり、公表を控えた」(同)としている。
東芝は、一連の不正会計問題を受けて東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定され、内部管理体制について審査を受けているが、昨秋にも子会社で不正会計が発覚した。