飯田口説の練習に励む立花佳子さん=宮城県石巻市成田
「石巻の曽根崎心中」とも言われる江戸時代からの悲恋語りが、約40年ぶりに復活の兆しを見せている。宮城県石巻市に伝わる「飯田口説(はんだくどき)」。昨秋、一人の女性が練習を始めた。研究家も本格的な語り手に育つよう期待を寄せる。
「色と恋とは是非なきものよ/高きいやしい上下はなきよ……」
領主・飯田氏の妻と、その家臣の許されぬ恋――。同市成田の立花佳子さん(81)が大きく手書きした歌詞を見ながら、独特の「七・七」の節回しに合わせて朗々と語り始めた。コーラスやカラオケなど歌うことが大好き。詩吟の経験もあり、声がよく通る。
「言葉も節も素晴らしく、この辺の地名がたくさん出てくるのがいい。なまっているのも好きです」。20歳のころ、公演を聞いて心が揺さぶられた。「やってみたいな」と思ったが、記憶の片隅に引っかかったまま時が過ぎていた。
感動がよみがえったのは昨年9月28日。元市教委生涯学習課長の武山文衛さん(68)が飯田口説の魅力を市内の講演会で語った。「60年間、待っていました」。立花さんは会の後、武山さんに駆け寄った。
数日後、武山さんから一枚のC…