大統領令をめぐり争われる合衆国憲法の条項
トランプ米大統領が出した、難民の受け入れや、中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一時禁止する大統領令をめぐり、訴訟が次々に起こされている。訴えた側は「不当な差別。違憲だ」と主張する一方、政府は入国許可の権限は大統領にあると反論する。違憲か大統領の権限か、訴訟の行方はどちらに軍配が上がるのかにかかっている。
特集:トランプ米大統領
マサチューセッツ州のマウラ・ヒーリー司法長官は1月31日、大統領令について「国家の安全保障ではなく、反イスラム感情に基づいている」として、無効を求める訴訟に参加すると表明した。ニューヨーク、バージニア各州の司法長官も同調し、動きは全米に広がっている。
ヒーリー氏は「出身国や信仰で差別しており、憲法の平等原則に反している」と指摘。永住権や米国へのビザを所持している人の権利を奪っており、「法の適正な過程」が取られていないとも強調している。
対するトランプ氏は、「イスラム教徒の入国禁止ではない」と反論。政府高官は「米国は主権国家であり、いかなる個人であろうと入国を認めるまでの義務はない」と強調する。誰が米国に入国して良いかを決めるのは大統領が持つ権限だ、との主張だ。
大統領令の正当性を示す根拠として「特定の外国人の入国が米国の国益に反する場合、大統領は必要と判断する期間にわたって入国を停止することができる」と法律に規定されていることを挙げる。有効なビザを持っていても入国が保障されるわけではないことを、国務省が以前から公言していることも補強材料だ。