関門海峡海上交通センターで航行船舶の動向を確認する運用管制官=北九州市門司区、金子淳撮影
東京湾、大阪湾や関門海峡など、船の往来が過密な海域の管制にあたる海上保安官の教育コースが来年4月、海上保安庁の教育機関・海上保安学校(京都府)に新設される。関門海峡で2015年に管制ミスによる船舶衝突が起きて検討が加速した。津波からの避難誘導など災害対応の強化も狙う。
コース名は「管制課程」とし、採用数などは6月に人事院が公表する。全国7カ所の海上交通センターに配置するまでの2年間、海上無線などの資格を取得させ、レーダーなどの機器を使った管制を指導。海上交通安全法や港則法など管制関係の法令に加え、海外航路の貨物船船長の大半が外国人という現状から英語教育にも力を入れる。
新課程は5年ほど前から検討されてきたが、15年11月に関門海峡で起きたコンテナ船とケミカルタンカーの衝突事故を受け、準備を加速させた。
この事故で、国の運輸安全委員会は16年11月、運用管制官の間違った情報提供が事故の一因と認定。第7管区海上保安本部(北九州市)は同年3月にまとめた内部報告書で、法で定めた運航ルールに反したコンテナ船の操船を注意せず、無線機の扱いも不慣れで交信が折々に途切れたまま管制を続けたことなどが事故を招いたと指摘。管制課程の早期設置を本庁に要望していた。
海保は現在、船艇職員などを管制官に充て、3週間の研修と半年の実地訓練で管制技能を教えている。海保幹部は「東北の震災以降、津波の際にはケミカルタンカーなどを安全な海域へ誘導する役割も求められている。質の高い管制官を安定的に養成する仕組みが必要だ」と話す。(佐々木康之)