熊本県長洲町の町立中学校で、男子生徒が女子生徒に暴力を振るった事案を調べるため同級生に実施したアンケートが廃棄されていた問題を巡り、女子生徒の両親が10日、「事件の原因に関わる重要な事実を知る機会を奪われた」として、町を相手取り慰謝料330万円を求める訴えを熊本地裁玉名支部に起こした。
訴状によると、女子生徒は中学1年だった2012年2月28日、授業中に男子生徒から耳を殴るといった暴力を受けて外傷性の難聴になるなどし、今も心的外傷後ストレス障害などで通院している。担任はクラスメートに、男子生徒から暴力を受けたり見聞きしたりしたことがあるかを紙に書かせ、その結果を校長に口頭で報告したが、同年3月上旬までに、回収した紙などを廃棄したという。
この問題をめぐっては、15年2月に、女子生徒が町や男子生徒らを相手取り、治療費や慰謝料などを求めて提訴し、熊本地裁で裁判が続いている。
町教委はアンケートについて「公文書ではないため保管する必要はない」としており、提訴については「訴状の内容がわからないのでコメントを差し控える」とした。
原告側代理人の遠矢洋平弁護士は「アンケートは事故を受けて学校長の指示で行った。公文書じゃないというのが理解しがたい。町教委は保管し報告する義務がある」と話した。(小原智恵、尾立史仁)