日立製作所の元会長兼社長の川村隆さん=山本和生撮影
会社が稼ぎ続けるためには厳しい局面で決断する経験を重ねた「ザ・ラストマン」(最終決断者)が欠かせないという。2008年のリーマン・ショックの後、社長として経営危機を乗り越え、社内でラストマン育成を進めた日立製作所の川村隆名誉会長(77)に考えを聞いた。
「メイド・イン・ジャパン」いらない 日立、海外に活路
連載「カイシャの進化」
――「ザ・ラストマン」とはどんな人ですか。
「世の中の動きをしっかり分析でき、会社や自分の将来像が描けて変化に対応できる人。描くだけでなく、断固、実行できる人です。世の中がこれだけ激しく変わっているのに、会社が現状維持でいいわけはありません。前任者と同じことをきちんとやるだけの人ではもうダメです」
――日立はラストマンの集まりになっていなかったのですか。
「なっていなかったから2009年3月期に7873億円もの赤字を出しました。1999年から2003年まで副社長だった私も責任を痛感していますが、日立全体で90年代からサボっていたんです。流れてくる仕事をさばくことに懸命なだけで、何をすべきかを考え抜かなかった。後部座席から(社長が座る)運転席を眺める副社長でした」
――日立工場長や副社長の経歴は日立の王道です。
「そんな経験では足りません。社長と副社長では見える景色がまるで違う。遅まきながらグループ会社のトップに転じて初めて知りましたが、決断する重圧、失敗する怖さはトップに就くと何倍も大きいものです。だからこれから幹部になる人には早くから海外などの子会社のトップを経験して、ラストマンとして厳しい決断を下す訓練をしてもらおうと思ったのです」
――社長の選び方も変わってきますか。
「社内の要所をスイスイと上が…