昨年の熊本地震で、車中に泊まって肺塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)になった人を済生会熊本病院(熊本市)が調べたところ、平均1・8泊で発症していたことがわかった。札幌市で開かれた日本集中治療医学会学術集会で10日発表した。「車中泊は短くても注意が必要だ」としている。
肺塞栓症は、同じ姿勢を長時間とることで足などの静脈に血の塊ができ、血流に乗って肺の血管を詰まらせて起きる。呼吸困難を生じ、死亡することもある。2004年の新潟県中越地震で注目され、車中泊が長いほど発症の危険が高まると考えられてきた。
熊本県によると、熊本地震の際、肺塞栓症で入院が必要と判断されたのは54人、うち43人が車中泊だった。本震の翌日から2日間に済生会熊本病院を受診した30~70代の10人について車中泊の長さを調べたところ、5人は1泊以内で最短8時間だった。最長は4泊だった。全員午前中に発症し、階段を上がったり、重い物を運んだりした後が多かった。下半身に力を入れた際、血の塊が肺に流れたとみられる。
調査した永野雅英・主任医員(循環器内科)は「トイレを我慢するため水分摂取を控えたり、飲み物が手に入りにくかったりしたため、水分が不足し、血が固まりやすかった可能性がある」と指摘したうえで、「十分に水分をとり、起床後は体を急に動かさないようにすることが重要だ」と話す。(阿部彰芳)