(C)Toshiyuki Urano
■米指揮者スタニスラフ・スクロバチェフスキさん
指揮者のスタニスラフ・スクロバチェフスキさん死去
楽譜を深く読み込むほどに、軽みと疾走感を増してゆく。不思議な成熟のかたちを見せた巨匠だった。
ギュンター・バント、朝比奈隆、ネビル・マリナーら、長命の指揮者はそれなりに「晩年の境地」なるものを見せたものだ。しかし、この人には最後までそれがなかった。枯淡というより、みずみずしいという言葉がこの人には似合っている。即興性に富む指揮は、時にリハーサルでの「お約束」を裏切るため、本番での楽員の集中もひとしおだったと聞く。08年のインタビューで語ってくれた言葉はまさに、その理念を証明するものだった。
「構成を緻密(ちみつ)に計算したりはしない。全ての声部をちゃんと響かせれば自動的に化学反応が起き、自然なダイナミズムが生まれる」
音楽の内臓を、きりりとしたテンポで小気味良く解剖していくスタイル。得意としたブルックナーの交響曲では、バッハ、モーツァルト、シューマンといった先人たちの個性がどのようにブルックナーという大河をつくりだしたかという歴史の伝播(でんぱ)までも、立体的に浮き上がらせてみせた。
人柄も飄々(ひょうひょう)と…