データで見る安倍1強
官庁街に囲まれた東京・日比谷公園にある洋食の老舗・松本楼。1月24日夜、自民党の役員約20人が集まった。安倍晋三首相の通算在職日数が歴代6位になったことを祝う会合。あいさつに立った首相の口調は、なめらかだった。
菅長官「省益で動く官僚。大臣は思うことをやるべきだ」
「山口出身の総理は私以外に7人います。そのうち在職期間ベスト10人に入っているのが5人います」
そして続けた。「長ければ良いってものではありませんが、一番長いのは、桂太郎です。こんなことは東北では言えませんが」
明治から大正にかけて3度も首相を務めた桂。長州・山口の出身で、通算在職日数2886日は歴代1位。戊辰戦争では官軍の一人として東北で戦った。安倍流の「お国自慢」で笑いに包まれた宴席は乾杯に移り、安倍首相は牛ヒレ肉のステーキを平らげた。
その姿を眺めながら、幾人かが同じ感慨を抱いた。「ずいぶん余裕なんだな」
その後も日米首脳会談ではトランプ氏との蜜月をアピールし、内閣支持率は安定。自らを直撃した学校法人「森友学園」への国有地売却問題でも「私や妻が関係したとなれば、首相も国会議員も辞める」と言い切るほどの自信をみせた。
3月5日の党大会で総裁任期の延長が決まり、安倍首相は来年の総裁選で3選をめざす立候補が可能になる。強力なライバルが見当たらず、党内では勝利が確実視されている。国政選挙で勝ち続けることが前提とはいえ、2019年11月に桂を抜き、21年9月まで通算10年、3500日超という憲政史上例のない超長期政権も射程に入る。
この「1強」はいかにして生まれ、この国の政治に何をもたらしているのか。それを探るには、首相の権限を強めるための改革を積み上げた「平成の楼閣」に迫らなければならない。(山岸一生)