サッカーで遊ぶ子どもや若者たち。ここで大人と仲良くなり、悩みを相談するようになる(NPO法人PIECES提供)
「する」「見る」「(ボランティアなどで選手や大会を)支える」という関わり方とは異なる、いわば第4のスポーツがある。その中の一つは、殻に閉じこもった子どもや若者たちを支え、変える。“課題解決型”スポーツだ。
東京都板橋区の男性(21)は、小学生の頃から家出を繰り返し、暴力事件を起こしてきた。それが一昨年の19歳の夏、ドッジボールに誘われたことで高校進学を目指すようになった。
「この年で?」。誘われた当初はいぶかしく思ったが、友達づきあいだと思って参加。現NPO法人の「PIECES(ピーシーズ)」(東京都渋谷区)の集まりだった。
元サッカー少年だった男性は運動が楽しくなり、法人理事の荒井佑介さん(27)や鈴木裕二さん(34)との会話が増え、自身の過去や、高校に行きたい思いも打ち明けた。塾を運営していた鈴木さんが勉強を指導し、昨春に都内の定時制高校に入学。途中、昔の非行仲間に振り込め詐欺へと誘われたが、鈴木さんの助言などがあり、関係を断ち切った。男性は「親や先生には反発してきたけど、(鈴木さんらに出会って)大人も悪い人ばかりじゃないと思えた」と振り返る。
同団体は、子どもの孤立を防ぐ目的で2年前に設立。当時から荒井さんと鈴木さんは貧困家庭の子の学習支援をしていたが、学校に行かない「本当に支援が必要な子」ほど、知り合う機会がないと感じていた。スポーツは、そんな子と出会うための手段。勉強を教えている子どもたちに、友達を誘うよう促している。
荒井さんは「『勉強しよう』と誘っても子どもは集まらない。スポーツなら友人を誘いやすいし、体を動かせば会話も弾んで仲間意識も芽生える」と話す。スポーツを通じて知り合い、支援に結びついた子どもは2年で十数人になった。スポーツが苦手な子もいるため、カード遊びや料理を囲む会なども開く。