毎日、「ただいま」と言って亀の湯に通う、復興工事の作業員たちと、斉藤ちか子さん(左端)=2月23日、宮城県気仙沼市魚町、船崎桜撮影
宮城県気仙沼市の漁港前に、漁師らに愛されてきた老舗の銭湯がある。津波に襲われながらも、翌年の夏から営業を再開。そこへ、今度は復興工事が立ちはだかった。立ち退きを求められ、131年の歴史に幕を下ろすことになった。
「亀の湯」の創業は1886(明治19)年。長年にわたり、三陸沖のカツオやサンマを水揚げする漁船員たちを癒やしてきた。男湯の入り口横の棚には、漁船の名前が大きく書かれた常連客の洗面器が並ぶ。
4代目の斉藤克之さん(75)は、いつも番台を降りて常連客と世間話に花を咲かせる。漁船員の結婚式に招かれたり、船の進水式に呼ばれたりもした。いまは復興支援で気仙沼に来ている人も加わる。
6年前の震災で、港町は炎に包まれた。魚市場や水産加工場、ホテル、飲食街はすべて無くなった。1031人が亡くなり、219人が行方不明になった。
亀の湯が入る建物にも濁流が押し寄せた。まわりの家は流され、船から漏れた油の臭いが漂い続けた。営業再開は絶望的に思えた。
その年の夏。大阪府池田市の支…