諫早湾干拓事業の和解協議と基金案
国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐる和解協議で、堤防を開門しない案で決着をめざす農林水産省が、開門を求める漁業者を説得するための想定問答を作り、地元漁業団体の幹部に示していた。複数の関係者の証言でわかった。国が協議を有利に運ぶために水面下で団体内の議論を誘導しようとしていた形だ。
農水省が想定問答を示したのは昨年11月下旬。開門を求めてきた佐賀、福岡、熊本の3県の漁業団体との会議の場だった。
この問題では、堤防の排水門の閉め切りが有明海の漁業不振の原因だとして開門を求める漁業者と、反対する干拓地の営農者がそれぞれ国を相手取って裁判を続けてきた。開門と開門差し止めの相反する司法判断が出る中、昨年1月に長崎地裁で始まった和解協議で、国は開門しない代わりに漁業再生のため100億円の基金を創設する案を提示。基金の運営を担う想定の沿岸4県の漁業団体にも賛同を求めていた。
複数の関係者によると、農水省の担当者は想定問答の資料を配って「組合員への説明に使ってほしい」「他言しないでほしい」と求め、その場で回収した。その後、同省職員が指南する形で同じ趣旨の想定問答が作られ、3県の漁業団体が共有したという。朝日新聞は8枚にわたるこの文書を関係者から入手。基金案に懐疑的な漁業者の20の質問に団体幹部が答える想定問答が記されていた。
「幹部だけで決めず、総会に諮…