大阪市の御堂筋で2014年、低血糖症による意識低下状態で乗用車を運転し、3人に重軽傷を負わせたとして、過失運転致傷罪に問われた会社員の宮谷則幸被告(68)に対する控訴審判決で、大阪高裁(中川博之裁判長)は16日、事件をさらに細かく解明する必要があると判断し、一審判決を破棄し、審理を地裁に差し戻した。
宮谷被告は危険運転致傷罪で起訴されていたが、大阪地裁は量刑の軽い過失運転致傷罪を適用し、禁錮1年6カ月執行猶予3年の判決を言い渡していた。
一審判決によると、糖尿病を患っていた宮谷被告は14年6月、低血糖症で意識障害になる可能性があったのに、血糖値を確認せずに乗用車を運転し、駐車場を出発。大阪市中央区の御堂筋交差点で意識低下状態で女性に衝突し、3カ月のけがを負わせるなどした。
一審判決は、糖尿病を患っていた宮谷被告が、低血糖症で意識障害になると予想できたのに「運転前に血糖値を測るなど事故防止のための注意義務を怠った」と過失を認め、有罪とした。
しかし高裁は、宮谷被告が運転1時間前に測った血糖値が高かったことなどから「意識障害の予想は不可能で測定の義務はなく、一審判決は是認できない」と判断した。運転を始めて1時間後に意識障害に陥るまで、症状が徐々に悪化した点などを考慮し、大阪地裁は運転中の過失の有無を審理していないと判決の不十分さを批判した。そのうえで「高裁が無罪を言い渡すことも考えられるが、繁華街で3人が負傷し、社会的にも注目されており、地裁で審理を尽くすべきだ」と差し戻しの理由を述べた。
検察側は一審で「意識障害に陥る前兆を感じていた」として危険運転致傷罪が成立すると主張していた。