大阪・心斎橋の路上で2012年6月、通行人2人を刺殺したとして殺人と銃刀法違反の罪に問われた礒飛(いそひ)京三被告(41)の控訴審判決が9日、大阪高裁(中川博之裁判長)であった。判決は「計画性は低く、死刑がやむを得ないとは言い切れない」と判断し、求刑通り死刑とした一審・大阪地裁の裁判員裁判の判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。
大阪地裁判決によると、礒飛被告は覚醒剤使用の事件で新潟刑務所を出所後、大阪で職探しをしたがうまくいかず、自殺しようと包丁を購入。ためらっているうちに覚醒剤の後遺症で「刺せ」という幻聴が激しくなり、12年6月10日に自暴自棄になって通行人の男性(当時42)と女性(同66)を刺殺した、とされる。
大阪地裁は「幻聴があっても行動を抑える力が著しく失われていたわけではない」と完全責任能力を認める判決を言い渡していた。
控訴審で弁護人は、幻聴に従ったと認めながら完全責任能力があるとした地裁の判断は感覚的なもので、精神鑑定を正確に読み解いていないと主張。「犯行は幻聴に駆り立てられた異常な行動だった」とし、減刑しなければならない心神耗弱状態だった疑いが残ると訴えていた。
また、量刑について「過去に死刑とされた無差別殺人では周到に計画された事件が多い」と指摘。今回の事件に計画性はなかったとし、「国家が人を殺す究極の刑罰の適用はためらわれる事件だ」と死刑を避けるよう求めていた。
傍聴した2人の遺族たちは判決が言い渡されると天を仰ぎ、傍聴席にはすすり泣く声も響いた。男性の父親はショックを受けた様子で、判決文が読み上げられるなか、一時退廷する場面もあった。(阿部峻介)