東芝は11日午前に取締役会を開き、この日が期限だった2016年4~12月期決算の発表を予定通り行う方針を固めた。監査法人側との調整は続いており、決算に監査法人による「適正意見」がつかない見通しだ。それでも発表に踏みきることになる。不信感を高める3度目の延期を避けたい考えだ。
特集:東芝の巨額損失問題
東芝は監査法人との間で、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の経営陣が早くから巨額損失を認識していた可能性などを巡って意見が対立。より詳しい調査を求める監査法人側に対し、東芝は「WH経営陣が事前に損失を認識していた証拠はない」としてきた。
両者の相違は大きく、監査法人側が納得していない模様だ。このため、決算は監査法人の「適正意見」がないままでの発表となる。「適正意見」のない発表をすれば、東芝は形の上では発表期限までに決算を出したことになっても、決算への信頼性は損なわれる。
東芝は午後に記者会見を行う予定だ。決算内容や、WHをめぐる内部統制の不備などに対する調査状況を説明する見通しだ。
過去の不正会計問題を受けて、東京証券取引所は、東芝株を「特設注意市場銘柄」にすでに指定している。問題企業として上場廃止のおそれがあると投資家に知らせ、改善度合いを審査中だ。通常の決算発表ができないなら、上場廃止リスクもより高まる。
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上場企業は金融商品取引法にもとづき、3カ月ごとに決算をまとめた四半期報告書を財務局に提出する必要がある。東芝で今回提出が遅れていたのは、2016年4~12月期の決算。2月中旬だった提出予定日を2度も延期し、今月11日が提出期限だった。
四半期報告書には監査法人の監査証明をつける必要がある。決算に問題がない場合は「無限定適正意見」、一部問題があるが重要でない場合は「限定付き適正意見」をつける。
問題が経営上重要な場合は「不適正意見」、経営陣の協力がないなど通常の監査ができない場合は「意見不表明」となる。
「不適正意見」や「意見不表明」は、東京証券取引所の上場基準に抵触する。東証はこうした状況に加えて、すぐに上場を廃止する必要があると判断した場合、上場廃止を決める可能性がある。
東芝はすでに過去の不正会計問題で、上場廃止のおそれがある「特設注意市場銘柄」に指定され、改善状況を東証が審査している。決算発表の遅れも重なり、東証の審査は厳しくなる可能性がある。