訓練には京都市上下水道局の給水車も登場し、住民たちは非常時の給水を体験した=昨年12月2日、京都市山科区、畑宗太郎撮影
災害時には、刑務所の敷地にも避難を。熊本地震から1年を迎え、そんな態勢づくりが各地で進む。京都刑務所(京都市山科区)は国内で初めて、地域住民とともに避難所を開く訓練をした。刑務官らの東日本大震災や熊本地震での経験が、「塀の中」と外をつなぐ後押しをしている。
■かつては暴動対策訓練
刑務所の訓練といえば、かつては塀の崩壊による受刑者の脱走や、暴動を抑える観点からだった。
しかし、東日本大震災を機に、地域住民の避難受け入れにかんする協定を自治体と結ぶ刑務所や拘置所が増えた。今年1月末現在、全国23施設に広がっている。
熊本地震で熊本刑務所は「本震」後の約1カ月間、武道場で最大約250人を受け入れた。その1年ほど前から協定締結に向けて準備していたこともあり、余震におびえる住民らが自然に集まったという。
所長として協定の準備に携わった山本孝志さん(60)は震災があったときは既に異動し、京都刑務所長を務めていた。そこで受刑者に出所後のアドバイスをするボランティアから「この刑務所でも災害への備えをしてほしい」と求められ、国内で例がなかった住民参加訓練を思い立った。
住宅街に囲まれた京都刑務所は約10万7千平方メートル。大半は「塀の中」だが、区分けされた敷地内には職員宿舎なども並ぶ。昨年12月の訓練では、その一画の武道場に、地域の高齢者や子ども連れの女性ら約300人が集まった。
「刑務所は塀の中で全てまかなえるようになっています」と山本さんはあいさつ。非常時に備えて受刑者定員1477人の1週間分の食料を蓄え、消防機能を持ち、医療職員もいる。同種の施設間の補給網もある。そんな「強み」をアピールした。