2016年のNAND型フラッシュメモリーの世界シェア
東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却で、1次入札に応じた台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が、5月中旬に予定されている2次入札に向けて、米アップルやソフトバンクグループに共同出資の協力を求めていることがわかった。政府が、中国・台湾への半導体技術の流出を警戒しているため、日米企業を巻き込んで懸念を薄める狙いがあるとみられる。
東芝は、東芝メモリの売却額について「少なくとも2兆円」(綱川智社長)とみつもる。鴻海はそれを上回る3兆円に迫る額を提示。金額では最も有利だ。しかし、政府は中台勢への売却を警戒し、外国為替及び外国貿易法に基づく中止勧告などで阻止に動く構えをみせている。
そこで、スマートフォンのiPhone(アイフォーン)製造などで関係が深いアップルと、鴻海の郭台銘会長と親しい孫正義氏が社長を務めるソフトバンクに出資を呼びかけた模様だ。政府の懸念を考えれば、鴻海単独での落札は難しいとみているためだ。
日米企業の出資を一定程度受け入れて、「鴻海色」を薄めて理解を求めたい考えとみられている。ただ、関係者によると、ソフトバンクは出資要請に対して消極的だという。
東芝が3月末に実施した1次入札の結果、半導体大手の米ブロードコムと米投資ファンドのシルバーレイクの連合が有力になっている。鴻海は巻き返しをはかろうとしているが、思惑通りアップルとソフトバンクを取り込めるかどうか不透明だ。
■東芝メモリの有力な売却先候補
・鴻海精密工業(台湾)
電子機器受託製造の世界最大手。米アップルやソフトバンクグループにも共同出資を要請
・ブロードコム(米国)
半導体大手。製品の開発や設計を手がける。米投資ファンドと組み、有力候補に
・SKハイニックス(韓国)
半導体大手。NAND型フラッシュメモリーの世界シェア5位
・ウエスタンデジタル(米国)
東芝と半導体製造で協業。売却の独占交渉権を強く求めている