トルコで、大統領の権限を大幅に強化する憲法改正案の是非を問う国民投票が、16日に実施される。世論調査によると、賛否は伯仲し、国を二分した状態になっている。トルコでは昨年7月のクーデター未遂事件以降、非常事態宣言が続いており、政権に批判的な報道機関は相次いで閉鎖を命じられた。国連機関などは「公正な情報の不在」を懸念している。
直近の民間世論調査によると、賛成派が上回っているものの、その差は数ポイント前後。態度未定が1~2割を占めるケースも多く、態度未定の有権者の当日の投票次第で、結果が左右されうる情勢だ。
改憲案を作成した政権与党の親イスラム政党「公正発展党」(AKP)は、ユルドゥルム首相ら閣僚に加え、大統領の政治的中立を求める憲法規定により離党したエルドアン大統領らが連日遊説。「改憲で強い大統領制を実現し、政治を安定させる」と賛成を呼びかけている。
一方、反対派の野党第1党で世俗派の共和人民党は、クルチダルオール党首らが「改憲が実現すれば、独裁を招きかねない」と訴えている。少数民族クルド人の支持者が多い野党第2党「人民民主主義党」も、同様に反対を訴えている。
トルコでは昨年7月、軍の一部によるクーデター未遂事件が起きた。それを受けて出された非常事態宣言の下、事件に関与したとみられる多くの軍人や公務員が拘束されたり、職を追われたりした。また、エルドアン氏やAKP政権に批判的な報道機関は、相次いで閉鎖を命じられた。
国民投票に選挙監視団を派遣する欧州安全保障協力機構は、国営メディアなどは賛成派ばかりを取り上げていると指摘。国連人権高等弁務官事務所は13日、「公正な情報に基づく議論が成立しにくい」と懸念を表明した。またトルコメディアによると、反対派の集会では、参加者が賛成派に襲われる事件や、ポスターが破られる嫌がらせが続出しているという。
トルコの有権者は約5532万人。投票は即日開票され、16日夜(日本時間17日未明)には大勢が判明する見通し。(イスタンブール=其山史晃)