自然の中を走る阿蘇カルデラスーパーマラソン(大会実行委員会提供)
毎年6月の第1土曜日に開かれていた阿蘇カルデラスーパーマラソンは、今年も中止になった。震災を乗り越えられず、1990年に始まった大会の歴史は止まったままだ。
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阿蘇の外輪山にそって反時計回りに走る100キロと50キロ。高低差約500メートルの厳しいコースにもかかわらず、最近は参加申し込みの初日で定員いっぱいになる人気の大会だった。1952人が走る予定だった昨年の第26回大会は、本震が起きた4月16日から10日後に中止が決まった。
2012年から4年連続で完走している福岡市の森山典太(てんた)さん(57)は「天候などで毎回違う“顔”を持っている大会。天気がいい時は、空を飛んでいるような感じ」。特に象ケ鼻や小嵐山近辺から望む阿蘇谷は絶景だ。
昨年も走る予定だった森山さんは、すでに納めていた1万4千円の参加料を寄付した。参加予定だったランナーの4割を超える850人が寄付を申し出た。総額は660万円を超えた。
今年も大会が開けないのは、崖崩れなどで象ケ鼻周辺を含むコース上の3カ所がいまだに通行止めになっているからだ。普段あまり使われない道なので、整備が後回しになっている。
阿蘇市観光協会によると、昨年の宿泊客数は約40万人で前年より38万人減。しかも半数が復興関係者だった。「阿蘇が元気を取り戻すのは、他の地域よりも時間がかかる」との声も聞く。ランニングに関しては民間のイベント会社主催のトレイルランなども予定されているが、阿蘇と言えばやはりカルデラマラソン。
大会運営事務局となっている阿蘇広域行政事務組合の井野智光事務局次長は「開催できる状況になるまで復興が進むのを祈るしかない」と苦しい胸の内を話す。宙に浮いた第27回大会が実施される日が来れば、阿蘇全体の復興が見えてくるのかもしれない。(堀川貴弘)