滋賀学園との引き分け再試合に勝利し、捕手古賀②のもとに走り寄る福岡大大濠の三浦。翌日の試合は登板しなかった
選抜高校野球大会(1日閉幕)で延長十五回引き分け再試合が2試合連続であったことから、甲子園大会の試合方式が改めて注目されている。
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日本高校野球連盟は3年前から、投手の肩ひじに過度な負担をかけない試合のあり方を再議論してきた。検証してきたのは、再試合をさせないタイブレーク制だ。延長十二回を終えて同点なら、十三回以降は無死一、二塁で攻撃を始める。タイブレーク制の代表的な試合方式だ。得点を入りやすくすることで、試合の早期決着を図る。
その是非については、このコラムでも何度か考えてきた。夏の選手権大会の主催者の一員としては、この方法が妥当だと思う。一方、一人の野球ファン、元高校球児としては、作為的に試合を動かすことに抵抗を感じてしまう。
タイブレーク制に対する疑問点、問題点を、もう一度だけあげてみたい。
①本来の目的は日程消化。投手を守る制度ではない。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でも採用されているが、投手を守るルールは別途、投球数の制限を設けている。
②延長十三回で勝った翌日、再び延長十四回になることもある。1人の投手が連投で無理をする可能性は残る。
③力のある投手をどんどん継投できるWBCと、高校野球は違う。すでに150球投げた先発投手が、いきなり走者を2人背負って投球することが、障害予防になるのだろうか。十五回で決着しない場合は十六回に入るのか――。
対案となる投球数や投球回数の制限は、指導者らに抵抗感が強い。少人数チームや、力のあるエースに頼るチームが不利になるという理由だ。
しかし、選抜大会で再試合に勝利した福岡大大濠は、次の試合で絶対的なエース三浦の先発を回避した。日本高野連が複数投手の育成を奨励してきた成果の表れだろう。意識改革は着実に進んでいる。
それでも指導者が判断に迷うときはあるだろう。
ここは原点に立ち返り、試合日程を再考してはどうだろうか。例えば現在は1日だけの休養日を3日に増やし、準々決勝、準決勝、決勝の前日に設定する。連戦そのものがない大会にするのだ。
阪神甲子園球場の使用期間については、大会前の甲子園練習を含めて球場側との調整は必要になるだろうが、一考の余地はあるはずだ。(編集委員・安藤嘉浩)